小論文がいつもC評価で、上達するような気がしないんですぅ
小論文を教えていると、スイスイ上達する生徒と何度添削を受けても伸びない生徒がいます。
何度やっても上達しない人の共通点、それは
「自己主張を書いている」ということです。
でも、小論文って「自分の意見」を書くものでしょ? 自己主張とは違うの?
小論文に「自己主張」は必要ない
たとえば「生活保護について、あなたの意見を述べなさい」というテーマでは、求められる答案はこんな方向性です。
貧困から抜け出せない原因は◯◯である。したがって行政は△△するべきである
不正受給が横行する原因は◯◯にある。したがって支給方法を△△にするべきである
これなら貧困とか不正受給という社会の問題が少しは改善できそうな気がしますね。少なくとも行政が何をするべきか、具体的な提案になっています。
もっとも、物事の解決策は何通りも考えられるもの。そのうち「どれを選んだか」という部分が「あなたの意見」になるわけです。
一方、同じテーマに対しこんな主張を始める人もいます。
私は労働こそ国民の義務だと思う。だから生活保護に甘えてはいけない!
それはあなたの感想ですよね?
「労働するべきだ」「甘えるな」というのは立派な信念ですが、病気や怪我で働けなくなった人は救われません。
個人的な信念や価値観は一旦置いといて、社会の問題を客観的に捉えることが大事なんです。
「自己主張」を書くと上達しなくなる理由
自己主張を書く癖のある人は視点が「内向き、主観的」になりがちです。
「書き手の自分」を主役にし、
「一貫した信念」を何にでも当てはめようとし、
「自分の持ちネタ」の外に発想を広げることがありません。
だから毎回同じようなことをグルグルくり返し書いてしまうわけです。
さらに、「答え」が自分の中にあるので他人のアドバイスを聞いてくれません(笑)
うーん、これが一番深刻かもしれない。
短期間で上達するためのシンプルな方法
「視点を主観から客観に」といわれても、難しいですよね。
でも「文体を主観的から客観的に変える」だったらできるかもしれません。
「主観の言葉」をやめてみよう
たとえば原稿用紙に向かったとき、無意識に「私は」と書き始めてしまう人がいます。
最初に「私は」と書いてしまったら、そのあとは自分の主観を続けるしかないわけです。
自己主張を書こうなんて思っていなくても、うっかり書いてしまった言葉に縛られてしまうんです。
そこで、自己主張つまり主観につながってしまう言葉遣いを全部禁止にしてみましょう。
「主観の文章」になってしまうNGワード5つ
1. 「私は」
まず「私は」を主語に使うのをやめてみましょう。
その代わり、物事を主語にします。
私はオムライスが好きだ(主観)
オムライスはこの店の人気No1メニューである(客観)
これだけで文章の視点を主観から客観に変えることができます。
2. 「…と思う」「…と考える」
物事を主語にしたとしても、文末に「と思う」「と考える」と書いてしまったら
「思う」の文法上の主語は「省略された『私』」になってしまいます。これでは主観の文に逆戻り。
文末は「…である」と言い切りましょう。
3. 「…だ」
小論文で「です、ます」を使わないというのは基本ですが・・・
学校ではこの「です、ます」の逆を「だ、である」と教わりますよね。
ところが、「だ」と「である」はまっっっっったく別物なんです。
「だ」は主観的表現、自己主張をするときの文末です。
……だ。……なのだ。……だろうか!
「だ」が続くと、なんだか暑苦しいじゃないですか。
…がある。…している。…する。…となる。
「る」で終わる方が冷静な印象です。
主観表現には「だ」がつく。客観表現は「る」で終わると覚えておきましょう。
4. 「そうだ」「ようだ」
「◯◯が問題となっているそうだ」「△△が増えているようだ」
本当かな?と疑いたくなってしまいます。
「そうだ」「ようだ」は伝聞または推量を表します。
伝聞=自分では見ていないが、人から聞いた
推量=確認してはいないが、たぶんこうだろうと勝手に思っている
いずれにしても「自分では確認していません」と宣言したことになってしまいます。
5. 「体言止め」
長年続いている日本経済の衰退。
そして国民に広がる政治不信・・・
センテンスの最後が名詞で終わる表現を「体言止め」といいます。
これは「感情的」「大げさ」という印象を与える表現で、小論文ではNGです。
そもそも体言止めって、国語では「詩の表現技法」の一つとして教わりますからね。
まとめ
どうでしょう?
敢えてこれらの主観表現を「一切使わない」という縛りで答案を書いてみましょう。
自分の価値観を書くのが難しくなるはずです。
でもその代わりに、現実の問題に目を向けるようになるでしょう。
内容がよくなるのは、それからです。
①自己主張を書いているうちは上達しない
②主観表現を禁止すると内容もよくなる
③NGワードは「私は」「思う」「だ」「ようだ」そして体言止め
代々木ゼミナール講師時代、小論文を「文章表現ではなく問題解決の科目」と再定義することで合格率を倍増。総合型選抜・学校推薦型選抜の個別指導では早慶医学部を含む第一志望合格率が9割を超える。1万5千本以上の添削指導を通して受験生の「書けない心理、伝わらない原因」を知り尽くす。
そのノウハウをまとめた参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」(KADOKAWA)はシリーズ25万部超のベストセラーとなる。またNHK Eテレ「テストの花道」出演、朝日小学生新聞・朝日中高生新聞の連載などメディアでも活躍。
現在は文章スキルと問題解決の講師として大手企業の社員研修に数多く登壇。受験のみならずビジネスでも通用するメソッドであることを証明している。
東北大学大学院文学研究科修了。合同会社ロジカルライティング研究室代表。
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