「体験談は書く?書かない?」小論文の論争に決着をつける1つの事実

体験談って、やっぱり入れた方がいいんでしょうか?
体験談が思いつかないときはどうすればいいの?『再生医療について』とか出されても、自分には何の体験もないし・・・『新聞で読んだことがある』とか?

 

小論文に体験談を書くべきか、どう書くか、悩みますよね。

でも大丈夫!

この記事を読むと、「体験談の正解」がわかります。

自己紹介

鈴木鋭智(スズキ エイチ)。「小論文のオキテ55」という参考書の著者です。朝日中高生新聞では「書ける×受かる!小論文」を連載中。このブログではゼロから始める高校生・受験生のために、小論文の書き方を超基本からお伝えします。

 

小論文に体験談は必要ない!

 

事実:「あなたの体験を踏まえて」という出題は2%


旺文社の「全国大学小論文入試出題内容5か年ダイジェスト」で調べてみると、

「あなたの体験を踏まえて」という条件がつく出題は全体の2%しかありません。

しかもその大半が看護系学部と芸術系学部に偏っています。

看護系、芸術系以外の学部では、体験談が求められることはほとんどないんです。

でも、「体験談という条件がない」からといって「体験談を書いちゃダメ」とは限りませんよね?

おっ、鋭い質問。

では、大学側の意図を確かめるために、高校入試の200字作文と比較してみましょう。

 

体験談を書くのは高校入試の200字作文


今度は旺文社の「全国高校入試問題正解 国語」で「200字作文」を調べてみると・・・

「あなたの体験から」あるいは「日常生活での例を挙げて」という条件がついている問題は2021年度で38%ありました。

大学入試に比べると体験談の比重が大きいといえますね。

この差は、中学校と高校の作文指導のゴールの違いによります。

 

中学校と高校では「作文の目的」が違う

小学校から中学校までの作文は、「自分の体験や気持ちを言語化する」というのが一つの教育目標です。

だから「ぼくは/わたしは」から始まって主観を述べる文章でよかったわけです。

これに対し高校以上の小論文では「客観的視点」が求められます。

客観的?

客観的とは、自分の立場にとらわれず、物事を公平に見ることです。

たとえば「わたしはオムライスが好きだ」は主観ですが、「オムライスはこの店の人気メニューである」は客観です。

「ぼくは算数が嫌いだ」は主観ですが、「23%の小学生が『算数が嫌い』と回答している」は客観です。

作文指導の方向性の違いという点から見ると、大学入試で「あなたの体験」という条件がほとんどないのは偶然ではありません。

「客観的な視点で書け=個人的体験は書くな」という大学側の明らかな意図があるわけです。

なるほど。
設問で体験談が求められていたら体験談を書く
求められていなければ書かない
というのが正解なんですね。
でも、「体験談には説得力がある」とはよく聞きますよね?「実体験こそ人の心を動かす」とか

 

体験談は説得力がある?

 

何かを述べるとき、それが正しいかどうかの根拠には「信ぴょう性」の順位があります。

周知の事実>個人の体験>想像

たとえば「子どもにゲーム機を与えるべきではない」と言いたいケースを考えてみましょう。

想像よりは体験談

「ゲームなんか与えたら子どもがバカになるに決まってる」というのは、おそらく想像です。本当にバカになるかどうか確かめもせず、先入観でものを言っている印象がありますね。

これに比べて「私はゲームばかりやっていたら成績が下がった」という体験談は、少なくとも自分自身で確かめた事実なので説得力はあります。

そうか、国語の先生が「体験談を書け」と教えるのは、「想像や思い込みで書くな」という意味なんですね!

その通り! 想像で書くよりずっとマシなんです。

個人の体験よりは広く知られた事実

ただし、「私は・・・」という体験談の場合、「それはあなただけじゃない?」「嘘ついてない?」という疑惑が生じてしまいます。

そこで「子どもがゲームをやる時間と成績に△△な関係が見られるという調査結果を◯◯研究所が発表した」というニュースを根拠にしたらどうでしょう?

研究機関がちゃんとした手法で調査したというお墨付き、それをテレビや新聞などのマスメディアが報じたというお墨付きが与えられています。

少なくとも「私の体験」より信用できるんじゃないでしょうか?

よく「小論文やるならニュースくらい見ておけ」と言われるのはそのためだったのか
自分の体験をみんなも知っているというケースは? 自分がニュースに出たとか、誰もが経験する「あるある」とか

 

誰もが知っている「私の体験」の場合は?

たとえばゲーマーの東大生が「私はゲームをやってもバカにならなかった」と言えば、誰も反論できません。

オリンピックの金メダリストが「日本の部活動は間違っている」と言うのも説得力ありますね。

それくらい社会的に認められた人なら、その貴重な体験談には書く価値があります。「あなたの体験を」という条件がなくても書いてOKです。

 

一方、「夏休みの宿題をためたら最終日が大変だった」というのは多くの人が経験することですよね。

この場合は「私の体験談」ではなく「よくあること」と一般化した形で書きましょう。

 

どんな対策をすればいいの?

こんな勉強法では上達しない!

小論文の「練習問題」として「◯◯について、体験談を踏まえて」というテーマを設定すること、ありますよね。

でも、この「◯◯について」という短文テーマ型の出題も大学入試全体の5%しかないんです。

「◯◯について」が5%、体験談が2%。

そして「◯◯について、あなたの体験を踏まえて」という短文で体験談を求める出題は・・・

ゼロです。

実際には出題されないものを何本書いても、合格答案には1ミリも近づくことはありません。

 

「私は」をやめてみよう

個人の体験や感想ではなく、客観的視点で書く。

と聞くと難しそうですが、

手っ取り早いコツがあります。

それは「私は」を主語に使うのをやめることです。

「私は◯◯に賛成だ」「私は〜だと思う」「私は△△したことがある」

原稿用紙に向かうと無意識に「私は」と書き始めてしまう人、多いですよね。

「私は」と書いた時点で、その文章は「個人の体験、感想、主観を書いたもの」になってしまいます。

(大人っぽく「自分は」「我々は」とかいっても同じことですよ)

「私は」を主語に使わず、物事を主語にしましょう

さっきのオムライスの例と同じですね?
たとえば・・・「私は増税に反対だ」ではなく「増税はよくない」みたいな感じですか?

 

たしかに「増税」は物事だけど、「よくない」だけじゃ説明不足じゃない?
「増税には家計を圧迫するというデメリットがある」ならどうかな?

 

いいですね! 個人の感想ではなく、根拠のある客観的な指摘になりました。

「私は」をやめてみる。これが大学入試で求められる客観的文章への近道です。

 

まとめ

 

①大学入試の小論文に体験談は不要

②高校入試の200字作文は体験談を求めることも多い

③客観的文章の練習は「私は」をやめてみるところから

 

小論文コーチ 鈴木鋭智

小論文コーチ 鈴木鋭智

 シリーズ20万部のベストセラー「小論文のオキテ55」シリーズの著者。現在は朝日中高生新聞で「書ける×受かる!小論文」を連載中。
 代々木ゼミナール講師時代、小論文を「文章表現ではなく問題解決の科目」と再定義することによって合格率を倍増させた。特に推薦対策の個別指導では早慶、医学部を含む第一志望合格率が9割を超える。
 その確実なノウハウは受験生のみならず就活生やビジネスパーソンにも支持され、現在はロジカルライティングの専門家として大手企業の社員研修に数多く登壇する。
 また地方の高校向けにオンライン小論文講習会を積極的に開催。7つの高校をつなぎ200人規模の講習会を成功させるなど、オンライン講義の手腕にも定評がある。
 東北大学大学院文学研究科修士課程修了(認知心理学専攻)。

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