小論文の初心者はみんなこういうところで悩みますよね。
でも大丈夫!
この記事を読むと、小論文の「正解」がわかります。
鈴木鋭智(スズキ エイチ)。「小論文のオキテ55」という参考書の著者です。朝日中高生新聞では「書ける×受かる!小論文」を連載中。このブログではゼロから始める高校生・受験生のために、小論文の書き方を超基本からお伝えします。
小論文とは「問題点と解決策を書く文章」
最初に「小論文とは何なのか?」という定義の話をしましょう。
小論文とは「世の中の問題に対し、解決策を出す文章」です。
大事なことなのでもう一度いいますよ。
小論文=問題点+解決策です。
小論文と作文の違いとは?
「作文」というのは、学校で生徒が書く文章全般の呼び名です。内容や形式はさまざま。
その中で、問題解決に特化した文章が「小論文」と呼ばれます。
つまり「◯◯が問題だ。だから△△するべきだ」という形になっているのが小論文。
「私はこう思う。なぜならこんな経験があるからだ」と書いても、問題点と解決策が示されていなければただの作文です。
ハハハ!(笑)そんな疑り深い人のために、「小論文は問題解決である」という定義が正しいといえる根拠を示しましょう。
根拠1:入試で出るのは「世の中の問題」ばかり
実際に大学入試で出題される小論文のテーマといえば、
環境問題、少子高齢化、地方経済の衰退、待機児童問題、ネット社会の闇、民主主義の危機、日本とアジア諸国の歴史認識問題……
どれも世の中で問題になっていることばかりです。
誰かが困っていたり怒っていたりする問題が出されたとき、
「私の感想とその理由」だけ答えた受験生と
「どうやって解決するか」まで答えた受験生がいたら、
採点者(大学教授)が評価するのはどっち?
社会の役に立ちそうな人材はどっち?
そりゃ断然、「どうやって解決するか」を答えた方です。
ちなみに・・・
「人生で大切にしているもの」「10年後の自分へ」みたいなテーマは問題解決と関係なさそうですよね。でも、これらのポエム的なテーマが出るのは高校入試や小論文模試だけです。現在の大学入試ではほとんど出題されません。
根拠2:学者の「論文」も問題点+解決策
高校生が書くのは「小論文」、研究者など大人が書くのは「論文」と呼ばれますね。
実は大人の論文も「問題点+解決策」という構成なんです。
たとえば分子生物学の論文なら
「DNAの働きについて、これまでこの部分が未解明だった(問題点)。
そこでこういう実験をしたら、こんなことが解明できた(解決策)。」
日本史学科の卒業論文(卒論)なら
「鎌倉幕府の成立について、従来の学説では説明つかない部分がある(問題点)。
これこれの文献・史料を参照した結果、こんな新解釈ができた(解決策)」
それぞれの分野で未解明な部分(問題点)を見つけて、新しい手法でその謎を解明する(解決策)。これが大人の「論文」です。
ですから、そのミニ版である小論文も「問題点+解決策」という基本構造は変わらないわけです。
小論文で「自己主張」は求められていない
たしかに実際の小論文の問題は「以下の文章を読んで、あなたの考えを述べなさい」という形が多いですよね。
でもこれ、「自己主張しなさい」という意味ではないですよ!
「思ったことを自由に書こう」とか「自己主張して爪痕を残さなければ」なんて早合点してはいけません。
「あなたの考えを」は感想ではなくアイデア
「あなたの思いを自由に述べよ」ではないことに気をつけましょう。
「考え」とは気持ちではなく、アイデアです。
小論文で「あなたの考えを」といわれたら、「あなたなら、この問題をどう解決しますか?」という意味です。
「自分の主張を論理立てて説明」の本当の意味
「小論文とは、自分の主張を論理立てて説明する文章」と教えられることも多いですよね。
間違いではないんですが、これまた「よっしゃ!自分の価値観を語るぜ!」と突っ走ってしまう高校生の多い、危険な説明なんです。
ここでの「自分の主張」はさっきの「あなたの考え」と同じ。「これが問題だ。だからこうするべきだ」という問題解決の提案ならOKです。
でも「私はパクチーが嫌いだ。なぜならば……」というのは個人的感想なのでNGです。
ところで、初心者は何から対策を始めればいいんですか?
どんな勉強から始めればいいの?
「易しいテーマで400字」の落とし穴
作文の時間なら、「私の好きな言葉」のような「易しいテーマ」で400字書かせたり、「なんでもいいから自分の気持を自由に書いてみよう!」なんて指導もいいでしょう。
内容はともかく、文字を書く練習、原稿用紙1枚埋める練習にはなります。
でも受験の小論文対策でこれをやるのはむしろ遠回り。
感想や主観を書く癖ばかりついて、「問題解決を提案する」練習にはならないからです。
小論文の初心者は、原稿用紙に向かう前に「簡潔に意見を述べる練習」から始めるのがいいですね。
100字で意見をまとめてみよう
まずは身の回りで「問題だな」と思うことを見つけ、「◯◯が問題だ。だから△△するべきだ」という形で意見を作る練習をしてみましょう。
そうそう!そんなレベルで十分オッケーです。
最初は30字(原稿用紙1行半)くらいでも構いません。100字で書けたら上等です。
「ここの歩道では歩行者と自転車がぶつかる事故がときどき起こっている。歩道が狭いのに自転車が通っているのが原因だ。だから車道に自転車専用レーンを作って自動車、自転車、歩行者を分けることが必要だ」(94字)
素晴らしい! 短いながらも、小論文の原型ができています。
まとめ
①小論文は「問題点をあげて解決策を出す文章」
②「あなたの考え」は自己主張ではなくアイデア
③「どう書くか」の前に「何を書くか」が大事。最初は「◯◯が問題だ。だから△△するべきだ」を100字でまとめる練習から始めよう。
この「100字の意見」を300字、600字、800字にしていく方法、問題提起と解決策のレベルを上げていく方法についてはまた別の記事でお伝えします。お楽しみに!
代々木ゼミナール講師時代、小論文を「文章表現ではなく問題解決の科目」と再定義することで合格率を倍増。総合型選抜・学校推薦型選抜の個別指導では早慶医学部を含む第一志望合格率が9割を超える。1万5千本以上の添削指導を通して受験生の「書けない心理、伝わらない原因」を知り尽くす。
そのノウハウをまとめた参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」(KADOKAWA)はシリーズ25万部超のベストセラーとなる。またNHK Eテレ「テストの花道」出演、朝日小学生新聞・朝日中高生新聞の連載などメディアでも活躍。
現在は文章スキルと問題解決の講師として大手企業の社員研修に数多く登壇。受験のみならずビジネスでも通用するメソッドであることを証明している。
東北大学大学院文学研究科修了。合同会社ロジカルライティング研究室代表。
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