体験談って、やっぱり入れた方がいいんでしょうか?
体験談が思いつかないときはどうすればいいの?『再生医療について』とか出されても、自分には何の体験もないし・・・『新聞で読んだことがある』とか?
小論文に体験談を書くべきか、どう書くか、悩みますよね。
そんなあなたに、「体験談の正解」を教えます!
小論文に体験談は必要ない!
結論からいうと、
大学入試の小論文では「体験談は求められたときだけ書く」というのがルールです。
その理由を説明しましょう。
事実:「あなたの体験を踏まえて」という出題は「たった2%」
◯◯について、あなたの体験を踏まえて論じなさい。
旺文社の「全国大学小論文入試出題内容5か年ダイジェスト」で調べてみると、
「あなたの体験を踏まえて」という条件がつく出題は全体の「2%」しかありません。
小論文の参考書などでは練習問題として「◯◯について、あなたの体験を踏まえて述べよ」という問題もありますが、
実際の大学入試では体験談が求められることは滅多にありません。
(だからこそ、たまに求められたときのために「設問の条件をしっかり読む」って大事です)
でも、「体験談という条件がない」からといって「体験談を書いちゃダメ」とは限りませんよね?
むしろリアリティーが出て評価が上がらないですか?
おっ、鋭い質問。
では、大学側の意図を確かめるために、高校入試の200字作文と比較してみましょう。
体験談を書くのは高校入試の200字作文
今度は旺文社の「全国高校入試問題正解 国語」で高校入試の「200字作文」を調べてみると・・・
「あなたの体験から」あるいは「日常生活での例を挙げて」という条件がついている問題は2021年度で38%ありました。
大学入試に比べると体験談の比重が大きいといえますね。
この差は、中学校と高校の作文指導のゴールの違いによります。
中学校と高校では「作文の目的」が違う
小学校から中学校までの作文は、「自分の体験や気持ちを言語化する」というのが一つの教育目標です。
だから「ぼくは/わたしは」から始まって主観を述べる文章でよかったわけです。
これに対し高校以上の小論文では「客観的視点」が求められます。
客観的?
客観的とは、自分の立場にとらわれず、物事を公平に見ることです。
たとえば「わたしはオムライスが好きだ」は主観ですが、
「オムライスはこの店の人気メニューである」は客観です。
「ぼくは算数が嫌いだ」は主観ですが、
「23%の小学生が『算数が嫌い』と回答している」なら客観です。
作文指導の方向性の違いという点から見ると、大学入試で「あなたの体験」という条件がほとんどないのは偶然ではありません。
「客観的な視点で書け=個人的体験は書くな」という大学側の明らかな意図があるわけです。
設問で体験談が求められていたら体験談を書く、
求められていなければ書かない、
というのが正解なんですね
でも、「体験談には説得力がある」とはよく聞きますよね?「実体験こそ人の心を動かす」とか
体験談は説得力がある?
何かを述べるとき、それが正しいかどうかの根拠には「信ぴょう性」の順位があります。
想像<個人の実体験<周知の事実
たとえば「子どもにゲーム機を与えるべきではない」と言いたいケースを考えてみましょう。
想像よりは体験談
「ゲームなんか与えたら子どもがバカになるに決まってる」というのは、おそらく想像です。本当にバカになるかどうか確かめもせず、先入観でものを言っている印象がありますね。
これに比べて「私はゲームばかりやっていたら成績が下がった」という体験談は、少なくとも自分自身で確かめた事実なので説得力はあります。
そうか、国語の先生が「体験談を書け」と教えるのは、「想像や思い込みで書くな」という意味なんですね!
その通り! 想像で書くよりはずっとマシなんです。
個人の体験よりは広く知られた事実
ただし、「私は・・・」という体験談の場合、「それはあなただけじゃない?」「嘘ついてない?」という疑惑が生じてしまいます。
そこで「子どもがゲームをやる時間と成績に△△な関係が見られるという調査結果を◯◯研究所が発表した」というニュースを根拠にしたらどうでしょう?
研究機関がちゃんとした手法で調査したというお墨付き、それをテレビや新聞などのマスメディアが報じたというお墨付きが与えられています。
少なくとも「私の体験」より信用できるんじゃないでしょうか?
よく「小論文やるならニュースくらい見ておけ」と言われるのはそのためだったんですね
まとめ
①体験談は設問に「あなたの体験を踏まえて」と条件がある場合だけ書く。
②ただし大学入試の小論文で体験談が求められるのは全体のたった2%。
③高校入試の200字作文で体験談が求められるのは「中学生までは主観を述べるのも一つの教育目標」だから。
設問の条件をよく読むことが大事なんですね!
改訂版 何を書けばいいかわからない人のための 小論文のオキテ55 鈴木鋭智・著 KADOKAWA
資料と課題文を攻略して合格答案を書くための 小論文のオキテPRO 鈴木鋭智・著 KADOKAWA
代々木ゼミナール講師時代、小論文を「文章表現ではなく問題解決の科目」と再定義することで合格率を倍増。総合型選抜・学校推薦型選抜の個別指導では早慶医学部を含む第一志望合格率が9割を超える。1万5千本以上の添削指導を通して受験生の「書けない心理、伝わらない原因」を知り尽くす。
そのノウハウをまとめた参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」(KADOKAWA)はシリーズ25万部超のベストセラーとなる。またNHK Eテレ「テストの花道」出演、朝日小学生新聞・朝日中高生新聞の連載などメディアでも活躍。
現在は文章スキルと問題解決の講師として大手企業の社員研修に数多く登壇。受験のみならずビジネスでも通用するメソッドであることを証明している。
東北大学大学院文学研究科修了。合同会社ロジカルライティング研究室代表。
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