入試の小論文は大問の中で問1,問2のように小問が分かれていることが大半です。
そして多くの場合、問1や問2で資料・課題文の説明を求め、問3など最後の小問で「これに対するあなたの意見を述べよ」と意見論述が求められます。
こんな感じですね。
問題 以下の資料を読み、あとの問いに答えよ。
問1 課題文中の下線部について、どういう意味か説明せよ。(100字)
問2 図1〜3を踏まえ、△△の現状について説明せよ。(250字)
問3 ◯◯について、あなたの意見を述べよ(600字)
ところが、実際の入試問題では「小問が資料説明ばかりで、意見論述がない」というケースも見られるんですよ。
たとえば島根大学教育学部前期の問題。
島根大学教育学部2025年の問題
島根大学教育学部前期試験の小論文は大問が3つあり、大問1が必須問題、大問2と大問3が選択問題になっています。
- 大問1
- 設問(一)
- 問1 課題文中に述べられている「今日のいじめの特徴」について、200字程度で説明しなさい。
- 問2 下線部にある「いじめの深刻化」が生じる理由について、200字程度で説明しなさい。
- 設問(二)
- 資料1〜3から読み取れる近年のいじめの傾向について、350字程度で説明しなさい。
大問1はどの小問も課題文や資料の「説明」ばかりです。「あなたの意見」は求められていません。
いじめがテーマだと、みんな何か思うところがあって持論を述べたくなるものですが、そこはグッと抑えて課題文と資料の説明に徹しましょう。
その代わり、この年度は大問2と3で「意見」が求められます。
- 大問2
- 設問A
- 問1 下線部①について、物質が酸素と結びつく化学反応のことをなんというか。
- 問2 この実験において、砂鉄とアルミニウム粉末を混ぜるのはなぜか。50字程度で説明しなさい。
- 問3 あなたが考える銅の利用の望ましい将来について、資料1・資料2の両方に言及した上で200字程度で述べなさい。
「望ましい将来」とは「こうあるべきだ」「こうする必要がある」という提案です。「あなたの意見」といえますね。「現状はこうである。今後はこうするべきである」という形で書きましょう。
大問2はさらに設問Bに続きます。(設問が多いので、島根大を受ける人は見落としに注意!)
- 大問2
- 設問B
- 問1 下の図2のような不特定かつ多数のものが利用する傾斜路が階段に併設されています。バリアフリー法施行令第十三条によれば、この傾斜路に手すりを設ける必要はありますか。解答欄の必要あり・必要なしのいずれかを選び、◯で囲みなさい。また、そのように判断した理由を解答欄に収まるように書きなさい。
- 問2 問1の傾斜路のθはおよそ何度ですか。各θは、小数第一位を切り捨て、整数で答えなさい。解答欄には、解答に至る過程も式および文で書きなさい。
- 問3(高齢者が利用する階段に代わる傾斜路の設置案)
- (1) 解答欄に、あなたが提案する傾斜路のイメージ図をかきなさい。その差異、以下の①〜④に留意すること。
- (2) (1)のように提案した理由を250字以内で説明しなさい。説明の中に、あなたが提案した傾斜路の勾配の値も含めること。
資料をちゃんと読んで計算すれば答えが出る問1と問2を踏まえての問3「あなたの提案」。設問が分かれている小論文では王道のパターンですね。
続いて、より「文系的」な大問3も見てみましょう。
- 大問3
- 問1 文章アにおける下線部について、それはなぜか、150字程度で説明しなさい。
- 問2 文章イにて述べられている、偽情報としてのフェイクニュースが作成される経済的動機について、文章アの内容と関連づけながら、300字程度で説明しなさい。
- 問3 文章ア、イ、ウのいずれが二つ以上の内容を踏まえながら、ソーシャルメディアを含むインターネット上の情報について、その特徴を活かした活用のしかたを300字程度で論じなさい。
問1、問2が問題提起になっているので、問3は「デメリットを踏まえた上でどう活用すべきか」が求められます。これも「あなたの意見」系といえますね。
島根大学2025年のまとめ
島根大学教育学部2025年前期の小論文はこのような構成でした。
大問1:どの設問も資料説明のみ
大問2:問3が意見論述
大問3:問3が意見論述
選択問題である大問2と3、どっちを選んでも全体としては意見論述が含まれていることになりますね。
2024年はどうだったかな?
毎年このパターンなのかどうかを確かめるため、2024年度の同学部の問題も見てみましょうか。
- 大問1
- 問1 文中の下線部①について、メリトクラシーとペアレントクラシーとには、どのような違いがあるのか。課題文を踏まえて100字程度で説明しなさい。
- 問2 文中の下線部②に関して、著者は、新自由主義的教育政策とペアレントクラシーとがどのような関係にあると捉えているか、150字程度で説明しなさい。
- 問3 ペアレントクラシーの台頭という点について、日本の教育はどのような状況にあると言えるか、課題文と図を踏まえつつ600字程度で論じなさい。
問3の問い方が紛らわしいw
「どのような状況にあると言えるか」という設問を文字通りに受け取れば、「こういう状況です。おわり」となるんですが、
他の設問が100字、150字で「説明」を求めているのに対し問3だけ600字。単なる説明にしてはここだけ字数が多すぎます。
すると「問題のある状況だ。だから◯◯するべきだ」という意見論述と見るのが自然ですね。
続いて選択問題の大問2,大問3も見てみましょう。
- 大問2 設問A(内容的にはほとんど理科の問題)
- 問1
- (1) 表をもとに、気温と飽和水蒸気量の関係をグラフで示しなさい。
- (2) 「金属製のコップ」を用いる理由を70字程度で説明しなさい。
- (3) この実験により、なぜ部屋に含まれる水蒸気量がわかるのか150字程度で説明しなさい。
- 問2 資料2のグラフから読み取ることのできる1901年〜2022年までの日本の降水量の変化について言及し、資料1の内容も踏まえながら、地球規模での水問題に関わる現状と将来について250〜350字で論じなさい。
問1の(1)から(3)までは理科の説明問題です。悩むのは問2ですね。
「現状と将来について」だけを見ると、前述の大問1の問3のように「やばい状況だ。だから◯◯すべきだ」と書きたくなります。
でも資料のグラフや文章に言及しながら250〜350字となると「資料の説明+現状+将来の予想」で300字くらいになりそう。
残り50字で地球規模の水問題について解決策を出す!って、それは無理があるかもしれません。
この問2は解決策を書かず、「資料から当然予想される将来」までの説明でいいでしょう。
大問2にはまだ設問Bが残っています。
- 大問2 設問B(記数法の歴史)
- 問1 次の数字(象形文字、ローマ数字)を解答欄に算用数字で記入しなさい。
- 問2 算用数字の利便性について解答欄に収まるように述べなさい。
- 問3(算数の問題を象形文字の記数法で考える)
- (1) 【問題】の答えを、象形文字を用いた記数法で解答欄に記入しなさい。
- (2) (1)の記数法の利点を、解答欄に収まるように述べなさい。
いろいろな記数法についての面白い問題ですが、「社会問題に対し解決策を提案する」という問題ではありませんね。
資料から理解したことを説明する問題の延長です。
一方、「文系向け」の選択問題、大問3はどうでしょう?
- 大問3
- 問1 文章イの下線部①の「作品は作者が発表した通りの形、『オリジナルの状態』で鑑賞すべき」という考え方は、文章アに含まれている主張に近いと考えられます。文章アも踏まえながら、こうした考えの根拠を推測して150字程度で説明しなさい。
- 問2 文章イの著者は、下線部②において「我々は多くの場合において、作品を厳密な意味での『オリジナルの状態』では鑑賞していない」としています。また下線部③のように多くの作品において「オリジナルからの改変行為」がなされているともしています。なぜこうしたことが起こるのか、その理由を、文章イを踏まえて600字程度で説明しなさい。
どちらも「説明しなさい」ですが、字数に差がありますね。
問1は単純に下線部を理解できたかどうかという説明問題。
これに対して問2の設問をよーっく見ると、あれ? 問1の下線部①と逆のことが書いてあります。
問1 下線部①「作品は作者が発表した通りの形、『オリジナルの状態』で鑑賞すべき」
問2 下線部②「我々は多くの場合において、作品を厳密な意味での『オリジナルの状態』では鑑賞していない」
矛盾していますよね。
同じ著者があっちとこっちで矛盾するようなことを書いていたら、それは著者が支離滅裂だからではありません。
表面的には矛盾に見えても、それが両立するような理屈が必ずあります。
ということは、「下線部②③を説明した上で、下線部①と矛盾することを指摘し、その矛盾を昇華できる解釈を提言する」という意見論述が600字に求められていると考えた方がよさそうです。
いわゆる社会問題とは違いますが、アカデミックな問題解決といえるかもしれません。
島根大学2024年のまとめ
大問1:問3で意見論述
大問2:設問Aも設問Bも説明のみ
大問3:問2が意見論述
この年度は必須問題の大問1が意見論述でした。
この学部の場合、意見論述がどこに出てくるかは年度によって変わるようです。
みなさんが受験するときは、設問の文言をよく見て「説明」か「意見」かをその都度判断してくださいね!
2022年、2021年の問題についてはこちら
2022年、2021年の問題について解説した動画です。