環境問題とか少子高齢化とかの社会問題なら「問題点+解決策」を書くって理解できるんですけど、芸術論のこの問題はどう書けばいいんでしょう?
芸術には規則がなくてもよいか。
社会問題じゃないし、芸術って人それぞれの感性でしょ?
自分の価値観を書けばいいのかな?
芸術論って、難しい・・・
いつもの社会問題とは違う出題に戸惑っていますね。今回はこの「芸術論」に挑んでみましょう!
身近な場面に置き換えよう
「芸術論」が難しいと感じられるのは、芸術家が凡人とは異なるセンスと才能の持ち主で、彼らみたいな発想で書かなきゃいけないと思いこんでいるからです。
でも、凡人である私たちが天才芸術家のふりをして小論文を書くというのは・・・無理な話ですよね。
こういうときは潔く、凡人の身近な場面に置き換えてみましょう。
私たちにとって「芸術」が一番身近なところといったら・・・
学校の美術・図工の時間かな!
うちの美術の先生、気難しそうな雰囲気出してるけど、話してみたら普通に猫好きでしたw
そうそう、そんな感じでいいんです。
では「学校の美術・図工の時間」に絞って「芸術には規則がなくてもよいか」を考えましょう。
芸術の「規則」とは?
今回のように設問が1行で完結している「短文テーマ型」の出題では、設問のキーワードをじっくり考えるのがコツです。
芸術における「規則」って、何でしょう?
他人の著作権を侵害しちゃいけないとか?
あと下品すぎて子どもに見せちゃいけないやつとか
あ、そっち?
僕は遠近法とか配色のルールとかを考えてた
いいですね! どっちも芸術に関連した「規則、ルール」です。
作品を世に出すときの社会的ルールと、作品を作る段階での技術的な法則。芸術の「規則」が2つの意味に解釈できることに気づいたら、それだけでも結構深い内容が書けるんじゃないでしょうか?
段落構成はどうする?
普通に考えたら、著作権のルールは守るべきだし、遠近法なども知っていた方がいい作品を描けますよね
だから規則はあった方がいい
でも、規則に縛られすぎるのも不自由じゃないかな?「表現の自由」って言葉もあるくらいだし
完璧に整った絵もきれいだけど、わざと下手に描いたイラストにも味がありますよ
なるほど、芸術の規則にもメリット・デメリットがありそうですね。
ということは、段落構成は「ディベート型(メリット・デメリット型)」の三段落で書けそうですね。
ガッカリ答案、スッキリ答案を比べてみよう
【ガッカリ答案】
芸術に規則は必要ないと私は考える。芸術は自分の内面を表現する手段であり、規則に縛られた芸術などただの模倣に過ぎない。オリジナリティこそ芸術の真髄だ。
私は高校時代、美術部でオリジナルな表現をすることに命を掛けてきた。規則に縛られることは芸術の死を意味する。自由な表現こそが、芸術を生き生きとしたものにするはずだ。
あのパブロ・ピカソも自由な表現をしたからこそ、唯一無二の芸術家となった。私もピカソのような偉大な芸術家になりたいと思い、日々の創作活動に打ち込んでいる。
熱い想いは伝わってくるけれど・・・
ちょっと中二病っぽい?
一方的に自分の価値観をまくし立てている感じで、
本当にオリジナルな作品を作ったことあるのかな?って逆に疑ってしまいます
ツッコミが鋭い(笑)
実際に自由な表現でオリジナルな作品を生み出そうとしてきた人なら、規則とぶつかった経験の一度や二度はあるはず。そこで規則について考えたことを書けば、経験に裏付けられた説得力のある答案になったかもしれませんね。
【スッキリ答案】
学校の美術教師がルールや法則を教えることは必要である。著作権や公序良俗など、社会のルールを守らなければ作品を世に出すことはできないからである。また遠近法や色彩理論などの基本的な法則は、作品をより理解しやすくし、優れた作品を作るためのヒントとなる。初心者にとってこれらの基本を学ぶことは大切な一歩である。
しかし同時に、生徒に自由な表現をさせることも必要である。ルール違反を心配しすぎるあまり創作の楽しさを失ったり、法則に縛られて発想が狭くなったりするためである。歴史を振り返っても、ピカソは遠近法の枠を超えたキュビズムを確立し、マネが描いた裸婦は不道徳として非難された。既存の常識を破ってこそ芸術は進歩するという一面もあるといえる。
したがって、美術教師は規則と自由のバランスを保ちながら美術教育を行うべきである。たとえば最初の課題では基本的な遠近法や色彩理論、そして社会の約束事を学び、その後は自由なテーマで作品を作る時間を設けることが考えられる。そして下手な表現や不適切な表現をしても強く咎めず、どこまでが許容範囲なのかを教えることによって、生徒も規則とのつきあい方を学べると考えられる。
「美術の先生」に絞ったことで、規則を守らせることのメリット・デメリットが具体的になっていますね
メリットもデメリットもあるので、「規則はあるべき」「規則はなくていい」という二択ではなく「バランス」が解決策になるわけですね。
代々木ゼミナール講師時代、小論文を「文章表現ではなく問題解決の科目」と再定義することで合格率を倍増。総合型選抜・学校推薦型選抜の個別指導では早慶医学部を含む第一志望合格率が9割を超える。1万5千本以上の添削指導を通して受験生の「書けない心理、伝わらない原因」を知り尽くす。
そのノウハウをまとめた参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」(KADOKAWA)はシリーズ25万部超のベストセラーとなる。またNHK Eテレ「テストの花道」出演、朝日小学生新聞・朝日中高生新聞の連載などメディアでも活躍。
現在は文章スキルと問題解決の講師として大手企業の社員研修に数多く登壇。受験のみならずビジネスでも通用するメソッドであることを証明している。
東北大学大学院文学研究科修了。合同会社ロジカルライティング研究室代表。
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