ひぇ〜! 資料が多すぎて、どこから手を付けたらいいか全然わかりません!(泣)
宮城大学の小論文(論説)は、資料の数が多いのが特徴です。初めて見ると面食らいますね。
でも大丈夫! 正しい手順で考えていけば、ちゃんと答えられる良問です。
宮城大学一般入試2024年前期・論説
宮城大学の過去問は大学HPで公開されています。
グラフが6つに、文章が3つもあるんですね!
どこから手をつけていいやら・・・
まず、落ち着いて「設問全体」を見渡してみましょう。
最初に設問をじーっと見る
資料の多い出題の場合、設問が細かく分かれていることが多いものです。
いきなりグラフに飛びつくのではなく、まず設問全体をじーっと眺めてみましょう。
問題 若者の居場所に関する資料1〜資料4をみて、問1〜問3に答えなさい。
問1
(1) 資料1は、全国の15歳から29歳までの若者を対象として、内閣府が行ったアンケート調査の結果である。図表A、図表Bから読み取ることができる、若者にとって居心地が良いと感じる場所の特徴と、他者との関わり方の特徴を100字以内で述べなさい。
(2) 資料1の図表C、図表Dから読み取ることができる、若者にとっての他者との関わりと生活の充実度との関係を100字以内で述べなさい。
(3) 資料1の図表E、図表Fから読み取ることができる、困難に直面した際の若者の行動上の特徴を150字以内で述べなさい。
問2
資料2〜資料4はそれぞれ、居場所とはどのようなものかについての解釈を述べているものである。これらの資料から読み取ることができる、居場所の特徴を挙げたうえで、これらの内容を整理し、300字以内で述べなさい。問3
資料1から、若者の居場所となりうるのは、①家庭(自分の部屋を含む)、②学校、③地域、④インターネット上が挙げられる。①〜④の中から1つを取り上げ、それらを若者の望む居場所にするための課題と解決策を、資料2〜資料4の内容も踏まえて400字以内で述べなさい。
なお、本問題において「若者」とは、15歳から29歳までの人々を指し、回答に際しては、以下の視点を含むこととする。
- 対象とするのは、どのような若者か。
- どのような居場所を作ることが望ましいか。
- その居場所は、誰に対してどのように働きかけると実現するのか。
こうして見渡してみると、全体の構成が何となくわかってきます。
- 問1 図表A〜F:若者の現状(問題提起)
- 問2 資料2〜4:居場所の定義(学者による解説)
- 問3 若者に居場所を持たせる方法(具体的な解決策のアイデア)
まったくゼロの状態で図表や課題文に突撃するよりも、「若者の居場所に関して何か問題があるんだな」と予想してグラフを見る方が資料にすんなり入っていけて、理解の助けになるはずです。
2つの資料の矛盾をさがせ!
(1)〜(3)は、どれも2つのグラフがペアで聞かれてますよね?
これって何か意味があるんですか?
いい質問です!
2つの資料がペアになっているときは、そのあいだに「矛盾」が隠れていることが多いんです。
どういうことか、実際に見てみましょう。
図表Aの『若者にとって居心地の良い場所』では、『自分の部屋』と『家庭』が多いみたいですね。やっぱり家が一番なのかな?
たしかに、図表Aでは自宅が「居心地のいい場所」になっています。
でも、図表Bを見てみましょう。『楽しく話せる時がある』とか『何でも悩みを相談できる人がいる』という項目では、家族の割合が一番多いものの、それに並ぶのが学校の友人です。
あ、本当だ!『学校で出会った友人』が2番目に多いですね。
奇妙なことに、図表Aでは『学校』が居心地の良い場所として一番少ないんですよ。つまり、若者は自宅や家族、そして学校の友人が大事だけど、学校自体は居心地が悪いと感じている。これが「2つの資料に隠された矛盾」なんです。
矛盾に気づくか気づかないかで、答案が全然違うことになっちゃいますね。危ない、危ない。
生活の充実はどこから? 学校 vs 地域
次は問1の(2)、図表Cですね。『学校で相談できる友人がいると生活が充実している』ということですか?
その通り! 図表Cを見ると、学校に相談できる友人がいるほど生活が充実しているという相関が見られます。
図表Dも「地域で相談できる人がいると生活が充実している」ってことでOKですよね。
でも、あれ? それだと2つのグラフに矛盾がない・・・?
いいところに気づきましたね!
一見、図表Dも地域に相談できる人がいることと生活の充実度に相関があるように思えますが・・・
各項目の(n=◯◯)という部分に注目しましょう。これは答えた人の人数です。
図表Cでは学校に相談できる人が「いる」と答えた人は(n=1190)、「いない」と答えた人は(n=1077)とあまり差はありません。だからこそ、その中での「充実している人」の割合の違いがわかりやすかったんです。
でも図表Dを見ると、地域に相談できる人が「いる」と答えた人が(n=280)なのに対し、「いない」と答えた人は(n=3403)。地域で誰にも相談できない人が圧倒的多数なんです。
これじゃ、地域の人に相談できるかどうかって、あんまり関係なさそうですね。
そうですね。ここでは「地域よりも学校に相談できる友人がいるかどうかが、生活の充実度に関係している」と答えるのが正解です。
ネット検索だけじゃ解決できない?
(3)の図表Eは、困難な状態が改善したきっかけですね。『家族や友人の助け』が一番多いみたいですけど、図表Fを見るとネットもかなり頼りにしているんじゃないですか?
じゃあ、インターネットで検索はするけれど、ネットは役に立っていなくて、結局は家族や友人が助けてくれるってことかな?
「2つのグラフの矛盾を見つける」という発想が身についてきましたね!
この(3)は上級編として、ちょっと客観的に資料を見てみましょう。
たしかに図表Fではインターネットで検索する人が多いんですが、図表Eでは「インターネットで解決した」という項目がないんですよね。
図表Eの「その他」に含まれているのかもしれないし、アンケートの選択肢になかったのかもしれない。いずれにしても、図表Eだけで「ネットが全く役に立っていない」とは言い切れません。
じゃあ、このグラフを用意した出題者の意図は何なんでしょう?
グラフを見るときのポイントは「一番大きい数字」ではなく「一番大きな差がある部分」。グーンと増えた部分だけでなく、ガクンと減った部分にも注目してみましょう。
もしかして、学校、公的機関、医療機関が頼りにもされていないし、実際に解決の役にも立っていないこと?
その通り! 2つのグラフで対応していないインターネットについて議論するより、2つのグラフから明らかな学校、公的機関、医療機関に注目する方が確実です。
問題点はここだ!学校も地域も頼りにされてない?
つまり、問1は何を伝えたかったんでしょうか?
問1〜問3に分かれている場合、問1は全体の出発点となる「問題提起」をしています。
ならば「家族と友人が一番♪」という平和な話ではなく、「学校・地域・公的機関が若者にとって居場所になっていない」という社会問題を示していると考えるのが自然ですよね。
どっちに解釈するかで、問1の答案だけでなく問3の内容も180度変わっちゃいそうですね。
パッと見て即答するんじゃなく、出題者の意図まで考えることが大事なんですね!
代々木ゼミナール講師時代、小論文を「文章表現ではなく問題解決の科目」と再定義することで合格率を倍増。総合型選抜・学校推薦型選抜の個別指導では早慶医学部を含む第一志望合格率が9割を超える。1万5千本以上の添削指導を通して受験生の「書けない心理、伝わらない原因」を知り尽くす。
そのノウハウをまとめた参考書「何を書けばいいかわからない人のための小論文のオキテ55」(KADOKAWA)はシリーズ25万部超のベストセラーとなる。またNHK Eテレ「テストの花道」出演、朝日小学生新聞・朝日中高生新聞の連載などメディアでも活躍。
現在は文章スキルと問題解決の講師として大手企業の社員研修に数多く登壇。受験のみならずビジネスでも通用するメソッドであることを証明している。
東北大学大学院文学研究科修了。合同会社ロジカルライティング研究室代表。
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